「それまで名前がなかった経験」が
物語を読んだことを通じて
名前を獲得したものではない
物語を読んだことを通じて
「『それまでなかった経験』が私にはあった」
という記憶そのものをつくりあげられたのである
勘違いしている人が多いが
人間の精神の健康は
「過去の出来事をはっきり記憶している」
能力によってではなく
「そのつどの都合で絶えず過去を書き換えることができる」
能力によって担保されている
現代中国で村上春樹は絶大な人気を誇っているが
それを「現代中国の孤独感や喪失感と共鳴するから」
というふうに説明するのは ほんとうは本末転倒なのである
そうではなくて
現代中国の読者たちは 村上春樹を読むことで
彼らの固有の「孤独感や喪失感」をつくりだしたのである
という 内田樹の村上春樹論を読んで
言葉では説明しにくかった村上春樹の凄さを
わかりやすい言葉で表していて感銘を受ける
0 件のコメント:
コメントを投稿