2010年6月6日日曜日

物語の力












「それまで名前がなかった経験」が

物語を読んだことを通じて

名前を獲得したものではない

物語を読んだことを通じて

「『それまでなかった経験』が私にはあった」

という記憶そのものをつくりあげられたのである


勘違いしている人が多いが

人間の精神の健康は

「過去の出来事をはっきり記憶している」

能力によってではなく

「そのつどの都合で絶えず過去を書き換えることができる」

能力によって担保されている


現代中国で村上春樹は絶大な人気を誇っているが

それを「現代中国の孤独感や喪失感と共鳴するから」

というふうに説明するのは ほんとうは本末転倒なのである

そうではなくて

現代中国の読者たちは 村上春樹を読むことで

彼らの固有の「孤独感や喪失感」をつくりだしたのである




という 内田樹の村上春樹論を読んで

言葉では説明しにくかった村上春樹の凄さを

わかりやすい言葉で表していて感銘を受ける





























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