2010年4月26日月曜日

箱船の航海日誌






ノアが箱船をつくり あらゆる動物を乗せて
漂流するという骨子は 旧約聖書の原作通りなのだが
動物たちが意思を持ち しゃべっている点がまず違う
救われるべき動物たちは
無垢な存在で箱船ではオートミールの食事を食べている
漂流中の不便に多少の不平はあっても
みんなで仲良く暮らしていけるはず、だった

一頭の「スカブ」という
禁断の肉食動物が紛れ込んでいたことから
物語は妙な方向へ展開していく
はじめは根暗で陰気な存在にすぎなかったスカブだが
しだいに箱船の動物社会に不穏な空気を広め始める
動物社会の分裂
そして 聖書の中では語られなかったノアの箱船の真相は


最初は良き意図を持って秩序正しく暮らしていた社会が
小さなきっかけから 次第に悪徳に見せられるものが増えて
落ちていく

もともとスカブは 根っからの悪魔的存在ではなく
ある偶然で 肉食という本能に目覚めることになった弱者である
生来の悪人ではなかったのだが
結果的には悪の扇動者になってしまう
悪の起源とは何か なぜ人は悪徳に魅かれることがあるのか
なぜ社会は分裂していくのか


イギリスでは児童文学の古典として知られているが
日本ではほとんど知られていない
























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